土壌有機化合物の動態とその生理的意義 有機物施用に伴い有機物中の多糖類(セルロース、ヘミセルロース、キチン)から分解生成する糖類の土壌中での動態について、圃場条件下で土壌酵素(cellobiohydrolase、s-glucosidase、β-xylosidase、s-N-acetylglucosaminidase)の活性を指標に検討した。土壌酵素活性の強さは施用有機物によって差があり、cellobiohydrolase、s-glucosidase、β-xylosidase活性は牛糞堆肥よりオガクズ堆肥で高く推移した。また、いずれの酵素活性も有機物施用後10-20日で最大値を示し、その後60日目まで時間の経過とともに低下した。もし、土壌酵素活性が施用有機物から供給される多糖類によって上昇するとすれば、これらの多糖類の土壌存在量は有機物施用後短期間に最大に達し、その後低下するものと考えられる。低分子の糖類やアミノ酸類はさらに迅速に土壌中で変化する可能性か高いことを考えると、施用有機物起原の土壌有機化合物の植物に対する生理的意義は、有機物施用後1ヶ月以内の比較的短期に効果が最大に達するものと考えられる。 植物根による水溶性有機化合物の吸収利用 シコクビエ幼植物を用いて各種アミノ酸吸収量を比較検討した。アミノ酸類の吸収利用様式はイネと類似しており、例えばL-glycineを吸収させた場合は、比較的短時間に根内にL-serineが蓄積してくることから、根内で速やかにアミノ基転位を受けるものと考えられた。従って、低分子有機化合物の植物に及ぼす生理的作用を検討する場合には、これらの植物根内の代謝を詳細に明らかにする必要がある。
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