研究課題
トマトの根の細胞の形質膜に存在する金属結合部位を持ったタンパク質LeGlp1の機能を知るために、(1)根組織での分布、金属結合に関与するアミノ酸の決定と、(2)そのアミノ酸の金属結合性を持たないアミノ酸への置換による機能や高次構造の形成への影響を調べた。(1)LeGlp1は根のみで発現することを明らかにし、mRNAがコードしている前駆体タンパク質の組織内のターゲッチングを決定すると思われるN末端リーダー配列をプロセシング部位を含めてリポータータンパク質を発現する遺伝子に連結し、タバコに導入してフュージョンタンパク質を作らせ、リポータータンパク質の根組織内での分布を調べた。その結果、LeGlp1のリーダー配列をもつリポータータンパク質は細胞内から外側に移行し失われることが明らかになった。βグルクロニダーゼはリーダー配列を付加されることによって局在を大きく変え、ホストの植物の形質に顕著な差を見ることができた。(2)LeGlp1のN末端のペプチド断片は遷移金属に対する結合性を示す。その領域にはシステインが2残基含まれ、そのチオールSが配位子となっていると考えている。タンパク質そのものが金属結合性を持つかどうかを調べるため、この2残基のシステインの金属結合への関与、および、LeGlp1の高次構造の形成に対する関与を調べるため、それぞれをセリンに部位特異的に置換した変異LeGlp1を発現する形質転換タバコを作成した。形質転換タバコの葉からタンパク質を抽出し、電気泳動法とウェスタン・ブロッチングによる免疫的な同定法を用いて高次の会合構造をもつ分子とモノマーを分離する方法を確立し、N末端の配位子の除去と高次構造の形成との関連性を明らかにした。また、結合金属による酸化還元性の付与を電気泳動後のゲル中活性染色により決定し、高次の構造をもつ会合体とモノマーでの反応性の違いを金属結合との関連に関して明らかにした。
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