研究概要 |
枯草菌および類縁菌はデンプン糖化用α-アミラーゼや洗剤用プロテアーゼ、セルラーゼ生産菌として産業的に利用されてきた。これら有用酵素のより高い生産性や異種生物に由来する有用蛋白質の分泌生産への利用を目的として、分泌蛋白質と膜蛋白質との識別と局在化の分子機構およびそのネットワークを解析している。枯草菌では1997年に全遺伝子の塩基配列が決定され、コンピュータ解析と二次元ゲル電気泳動による解析で約180種類のタンパク質が培地中に分泌生産することを明らかにした。次にタンパク質分泌装置および膜タンパク質については解析を進めて居り、分泌蛋白質と膜蛋白質局在化のネットワークを研究できる所まで来た。 (1)in vitro系を用いて、タンパク質分泌系で作用する細胞膜通過装置を構成するSecAタンパク質とシグナル認識粒子のFfhタンパク質が結合できることを明らかにした。次に分泌タンパク質前駆体pAprEまたはpPBP5^*とSecAとの結合は前駆体タンパク質とFfhとをあらかじめ反応させておくことによって、15-30倍増加することを明らかにした上で、前駆体タンパク質とFfhを反応させる際に、特定のFfh変異体を使用するとSecAと前駆体タンパク質との結合を増加させる活性はほとんど無くなることを明らかにした。 (2)タンパク質分泌系で作用するFtsYタンパク質(ヒト細胞におけるSRP受容体SRα相同因子)の遺伝子発現・制御機構を解析した結果、ftsY遺伝子が胞子形成時にも強く発現していることを明にした。胞子形成時にftsYの発現がなくなる条件欠損変異株を作成して解析したところ、欠損条件下では胞子アウターコートが薄くなり、変則的であった。またタンパク質のうちCotA,CotB,CotEが変化を起していることを明かにした。 (3)コンピュータソフトウェアSOSUIおよびP-SORTを利用して、枯草菌の全遺伝子産物4,100種類を解析し、その1/4にあたる約1000種類が細胞膜タンパク質であると推定し、種々の可溶化条件で細胞膜タンパク質を抽出し、一次元および二次元ゲル電気泳動法で解析した。さらにMULDI-TOFMSによって約500種類の蛋白質を同定した。
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