枯草菌における菌体外蛋白質の分泌機構と膜蛋白質の識別・輸送・局在化機構を解析し、細胞内におけるこれら機構の相互作用・ネットワークを明らかにするために以下の研究を行った。 (1)枯草菌蛋白質分泌系で作用するSRPの構成成分と機能分担について: ヒトSRPの構成成分であるSRP 7S RNAとSRP54蛋白質の枯草菌相同物質としてscRNAおよびFfhを明らかにし、さらにSRP 7S RNAのAluドメインにあたるscRNAドメインIに結合する蛋白質としてヒストン様蛋白質Hbsuを明らかにした。これらの各成分に変異を導入して、前駆体蛋白質の認識・結合への影響を解析し、SRP構成成分の機能の分担を解析した。 (2)SRP受容体FtsYとSRPの蛋白質因子のFthとの相互作用の解析: FtsYは哺乳類細胞におけるSRP受容体SRαサブユニットの相同因子として見出された。FtsYは蛋白質分泌系で中心的な役割をするSecAとは相互作用できないがFthとは相互作用できることを明らかにした。さらにFthはFtsYが存在しない時は細胞膜に存在するがFtsYを加えると膜から細胞質中に遊離した。これらのことから蛋白質分泌系におけるFtsYの役割を解析した。 (3)枯草菌細胞膜を構成する蛋白質とネットワークの解析: 枯草菌ではゲノム解析の結果推定された4100種類の遺伝子産物のうちの30%以上に当たる約1400種類が膜蛋白質と推定された。実際に細胞膜を調整し、二次元ゲル電気泳動で分離し、MALDITOF MSによって細胞膜蛋白質成分約637種類を同定し、蛋白質分泌機構との関係をSecA条件欠損株を利用して解析し、蛋白質局在化ネットワークを解析した。
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