T. thermophilusの発現ベクターのプロモーターをより強力なものに置換することによって、P. horikoshii OT3株の各種の遺伝子を効率的に発現出来ることを明らかにした。特に、S-layer遺伝子のプロモーターを用いた場合には、3遺伝子について大腸菌での発現レベルを上回る活性が確認された。中でも、α-マンノシダーゼ遺伝子は、これまでは大腸菌では全く発現が認められていなかった遺伝子であり、これがT. thermophilusで発現されたことは特筆すべき成果である。 外来遺伝子の発現レベルのさらなる向上を目指して、ベクターの多コピー化を試みた。すでに得られていた多コピー型変異プラスミドpPP442mと従来の発現ベクターの全塩基配列を決定し、両者を比較したところ、pPP442mの多コピー化の原因は、レプリコン上流域へのゲノムDNA断片の挿入によるものであることが明らかとなった。そこで、この領域を発現ベクターに導入して、多コピー型発現ベクターpET-Pslpmを新たに創製した。なお、このベクターは大腸菌とのシャトルベクターとして作製された ゲノムへの外来DNA組込み効率の改善を目指して、T. thermophilus HB27株の修飾酵素遺伝子をクローニングした。得られた遺伝子を大腸菌の発現系に導入することによって、in vitroでの供与DNAの修飾システムが確立され、外来DNAの組込みがより簡便に行えるようになった。 制限酵素と修飾酵素の遺伝子は、多くの微生物で並んで存在していることが報告されていたが、HB27株では修飾酵素遺伝子の近傍に制限酵素遺伝子は存在していなかった。HB8株では制限酵素遺伝子と修飾酵素遺伝子が隣接していたが、これらはThermus型とは異なり、比較的最近に遺伝子の水平伝播によって獲得されたものと推察された。
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