研究概要 |
本基盤研究は、出芽酵母の染色体を効率良く多数のミニ染色体に分断する技術(ゲノムの大規模改変技術)の開発とそれを利用した最少ゲノム酵母の創製を目的としている。昨年度までに、分断ベクターを2分割し調製する方法(2断片型)や、酵母染色体全域に200コピー以上存在するデルタ配列をターゲットとすることで、ターゲット配列を分断ベクターに逐一クローニングする過程を省略する方法(反復配列ターゲット型)を考案し、いずれの方法においても従来法と比べて簡便に酵母染色体を分断できることを明らかにした。しかし、これらの方法においても、形質転換体の選択符号が繰り返し使用できないこと、また任意の部位で分断を行おうとするときには、なおターゲット配列を分断ベクターにクローン化する必要があることなど、高効率の分断のためには、解決すべき課題が残されていた。そこで、本年度は、これらの問題を解決するため、まず、出芽酵母内でも機能するが相同性が低いC.glabrata由来のLEU2、HIS3、TRP1遺伝子を選択符号として使用する為にクローニングした。次に、これらの選択符号を用いて繰り返し形質転換が可能となるように、部位特異的組み換え系Cre-loxPシステムを用いた選択符号再利用系を取り入れ、実際にミニ染色体から選択符号が除去できることを示した。次に、標的配列をクローン化することなく分断断片を調製するため、PCRによる増幅を試みたが、テトラヒメナ由来のテロメア配列(Tr)が存在する為、増幅できないことがわかった。そこで、Trを構成する5'-TTGGGG-3'のリピート配列を取り入れたプライマーを用いてPCRを試みたところ、効率良く増幅できることがわかった。こうして調製した分断用断片を染色体分断に用いたところ、効率良く分断できることが分かった。これらの方法を用いることによって、第1番(230kb)、4番(1520kb)、及び5番染色体(570kb)がそれぞれ、5断片(25,45,45,50,65kb)、6断片(100,150,230,250,360,430kb)、5断片(40,85,90,135,220kb)に分断された分断染色体保持細胞株を作成した。
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