研究概要 |
前年度に引き続き、有機塩素系除草剤ダラポン(2,2-ジクロロプロピオン酸)を分解する土壌細菌Pseudomonas sp. B7aM株、および有機リン系殺虫剤ダイアジノンを分解する土壌細菌Sphingomonas sp. No.6株の、分解に関わる酵素遺伝子および遺伝子をコードするプラスミド、トランスポソンを解析した。 (1)ダラポン分解に係わるデハロゲナーゼ遺伝子 ダラポン分解菌Pseudomonas sp. (16S rDNA解析ではBurkholderia sp.)の有する約70kbのプラスミドには、ダラポンを脱塩素化するデハロゲナーゼの遺伝子がコードされている。遺伝子周辺領域35kbの塩基配列を解析した結果、約3kb下流域に挿入配列IS1071が存在し、約16kb上流域にもIS1071の部分配列が存在していた。従ってデハロゲナーゼ遺伝子は2つのIS1071に挟まれた複合型トランスポソンであった可能性が示唆された。この大きなトランスポソン様構造の中には別の2つのIS(1.2kb)に挟まれたシグマ54アクチベーター遺伝子が認められ、プラスミドの複雑な成り立ちが推察された。本プラスミドはAlcaligenesのプラスミドpFL45と同じ起源であると考えられた。 本デハロゲナーゼは2-クロロプロピオン酸のD, L両異性体に作用する。部位特異的変位導入により基質特異性の変化した酵素を創製した。 (2)ダイアジノン分解に係わるチオリン酸エステラーゼ遺伝子 ダイアジノン分解菌Sphingomonas sp.が有する約50kbのプラスミドはダイアジノン分解に関与していなかった。ダイアジノン分解酵素チオリン酸エステラーゼの遺伝子はゲノムDNAに存在し、本遺伝子の上流および下流に挿入配列IS6100が認められたので、クラスI型複合トランスポソンである可能性が示唆された。しかし、その転移能は確認できていない。 本菌はスミチオン、パラチオンなど他のリン系農薬もよく分解するので、これら農薬で汚染された土壌や排水の浄化のための実証試験を行った。50ppmの農薬で汚染された土壌、排水は、分解菌の散布により2日間で完全に浄化された。
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