イネ根圏の窒素固定菌を改良強化して化学窒素肥料を節約することを最終目標として、イネ科植物の根圏から新たに単離した128の菌株中から、窒素固定活性が非常に強い1菌株(Br1株)を得た。Br1株は、胞子を形成する桿菌であり、好気条件下で生育し、周鞭毛による運動性を示し、カタラーゼ陽性であることから、Bacillusグループに属すると判定した。さらに、16S rDNAの塩基配列を決定した結果、Br1株はPaenibacillus azotofixans、Paenibacillus borealis、Paenibacillus stelliferとそれぞれ97%の相同性を示した。また、API50とAPI20による生理学的なテストの結果、60項目のうち、P.azotofixansとは6項目、P.borealisとは10項目において異なる性状を示した。これらの結果から、Br1株はPaenibacillus属の新種であると結論し、Paenibacillus fujiensis sp. nov. Br1としてDNAデータバンク(DBBJ)に登録した。Br1株は、嫌気的条件で窒素源としてアンモニアがない時にのみ窒素固定能を発現した。窒素源としてアンモニアが存在する場合は窒素固定が抑制されるのに対して、窒素源として硝酸が存在する場合には窒素固定が抑制されず、むしろ強かった。また、一旦誘導された窒素固定活性は、アンモニアを添加しても阻害されなかった。
|