研究概要 |
一昨年、および昨年度に引き続いて、イネ培養細胞からディファレンシャルスクリーニングにより得られたジャスモン酸(JA)応答性遺伝子の機能解析を行うとともに、ある種の遺伝子については転写制御機構の追究を行った。JAの生合成酵素遺伝子の一つである12-oxophytodienoic acid (OPDA) reductaseをコードしているOcOPR1については、5'上流域約1kbを単離し、パーティクルガンを用いてreporter-gene assayを行い、転写調節に関わるシスエレメントの特定を試みた。その結果、300-400bp上流にactivatorが結合すると考えられるシスエレメントの存在が示唆された。早期にJAに応答する転写因子遺伝子RERJ1については、アンチセンスRNAを過剰発現する形質転換体イネの表現型を解析し、アンチセンス体がJAの伸長抑制作用に対して抵抗性を示すことを明らかにした。また、すでにORF全長を含むcDNAを単離していた、フィトアレキシン生合成の鍵酵素であるジテルペン炭化水素環化酵素遺伝子OsDTC1を大腸菌で発現させ、その遺伝子産物の機能解析を行い、ent-cassa-12,15-diene synthaseとして機能することを明らかにした。ent-Cassa-12,15-dieneは、イネのフィトアレキシンである(-)-ファイトカサン前駆体のジテルペン炭化水素である。また、エリシター処理したイネ培養細胞で発現している、もう1種のジテルペン炭化水素環化酵素遺伝子OsDTC2のORF全長を含むcDNAの単離にも成功した。 一方、ダイズ培養細胞から酵母のthree-hybrid systemを用いることにより単離したJA受容体候補タンパク質遺伝子、PRK1は、ある種の病害抵抗性タンパク質に特徴的な保存配列を有しており、その生理学的機能はきわめて興味深い。PRK1の遺伝子産物のJA結合活性を[^3H]JA-β-alanine conjugateをプローブとして測定したところ、有意な結合活性が認められた。また、ノーザン解析により、当該遺伝子のJA応答性を調べたところ、JA処理により発現が抑制されることが示された。
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