研究概要 |
ツユクサ青色花弁色素コンメリニンやヤグルマギク青色花弁色素プロトシアニンに代表されるメタロアントシアニン(自己組織化超分子金属錯体色素)は、アントシアニンだけでなく、フラボンとマグネシウムや鉄イオンを含み、分子量は8,000を超える化学量論的会合分子である。メタロアントシアニンの形成は、精密な構造認識のもと、厳密に相手を選んで起きることがすでに我々により明らかになっている。さらに、その分子会合はキラルであり、その原因は配糖体であるアントシアニンとフラボン両方の糖鎖に拠るものと推定できる。本研究は、配糖フラボンおよび配糖アントシアニンの化学合成法を確立し、メタロアントシアニンの形成時における-D-およびL-キラル分子認識機構を解明する目的で行なった。 フッ化糖を用いて、ルイス酸とテトラメチルグアニジンの組み合わせにより、求核性の低いポリフェノールの水酸基を高選択的、高収率で直接配糖化する合成法を開発することができた。この方法を展開して、サルビアパテンス青色花弁のメタロアントシアニン、プロトデルフィン、の構成フラボンであるアピゲニジン-7,4′-ジグルコシドの4種の7-D,4′-D,7-L,4′-L,7-L,4′-D,7-D,4′-L,のグルコシルフラボンを合成した。さらに、天然のD-グルコースで配糖化されたサルビアパテンスの構成アントシアニンとのマグネシウム存在下でのメタロアントシアニンの形成を調べ、キラル分子認識にはフラボンの、4′位の糖のキラリティーが重要であることを明らかにできた。
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