研究概要 |
青色花の色素は、主に、超分子金属錯体の形成による。錯体形成によって、色は安定化され、美しい花の色となる。花の色が花粉の虫媒のシグナルとして働くばかりではなく、色素そのものが太陽光の紫外線遮断や抗酸化能によって遺伝子や生体組織を保護機能を持つと推定されている。本年度は、メタロアントシアニンの形成メカニズムの解明とアントシアニンの遺伝子損傷回避効果を明らかにした。1)反応性の乏しいフェノール性水酸基に糖鎖を導入する方法を開拓した。これによって、メタロアントシアニンのフラボン構成成分であるアピゲニン4',7-O-ジグルコシドシドの4種の光学異性体と関連体を合成した。青色金属錯体超分子色素の形成には4'-OのD-糖が決定的役割を果たしていることを突き止めた。三つのフラボン分子の4'-O位のグルコースが互いの強い水素結合ネット-ワークで結ばれ、これが要となって、フラボン分子がMキラルに立体配置をして、超分子を形成することがわかった。2)アントシアニンによる有害光線遮蔽効果を安定色素のアサガオヘブンリーブルーアントシアニン(HBA)を用いて行ない、その効果を明確にできた。最初に、色素細胞の大きさと色素濃度をミクロ吸光分析法によって求め、in vitroでの遮光モデル系を構築した。UV-B〜可視光領域の単色光、混合光をアントシアニン溶液のフィルターを通して鮭の精子DNAに照射した。光によって生成するチミジン2,2-、4,6-2量体をELISA法によって測定した。花弁中に含まれるアントシアニンによって、太陽光の有害紫外線による遺伝子損傷が完全に防御できることが明らかとなった。この防御の化学的機構解明については現在明らかになりつつある。
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