研究概要 |
天然色素アントシアニンは花粉の虫媒、強烈な太陽光の照射からの保護、有害ラジカルの消去等の生物機能以外に、眼科試料薬や安全な食用着色料として、さらには、動脈硬化やガンなどの疾病予防薬としても注目されている。本研究では、アシル化アントシアニンの1.柔軟な合成手法の開拓、および、2.紫外線防御機能に関する化学的証明を行なうことができた。 1.配糖化フラボンからアントシアニンへの変換 ルチンや配糖体ケルセチンを各種の金属で還元することにより、アントシフニンへ(シアニジン3-ルチノシド)への変換を検討した。亜鉛アマルガム、亜鉛末、マグネシウムを塩化水素ガス含有メタノール中で反応させたところ、いずれも目的のアントシアニンが得られたものの、収率が数%〜十数%と著しく低いことが明らかになった。その理由を探ったところ、(1)反応条件下でアントシアニンがさらに分解する、(2)副生成物の天然物のフラブ3-エンが生成する。アシル化ルチンもアントシアニンへと変換できることがわかった。 2.アントシアニンの光遮蔽効果に関する研究 空色西洋アサガオ花弁に含まれる多アシル化アントシアニンのヘブンリーブルーアントシアニン(HBA)の花弁の表層細胞内の濃度をプロトプラスト化して求めた(約10^<-2>M)。この結果をもとに模擬細胞系紫外光照射装置を考案して、石英セル中にHBA溶液を入れ、それを通してDNA溶液に紫外光を照射した。ブロードなUV-Bと単色光の紫外光をそれぞれ照射し、DNAに生成した光損傷物(チミジン二量体、6,4-付加体)をエライザ法で定量した。いずれも、細胞中と同程度の濃度のHBA溶液(5x10^<-3>M)で十分に損傷が防御されることがわかった。アントシアニンが太陽の有害紫外を遮断して遺伝子損傷を防いでいる機能を持っていることを明確にできた。
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