研究概要 |
1、植物病原細菌のシグナル分子に関する研究 Pseudomonas avenaeは、イネ等の単子葉植物に感染するが、その宿主特異性は、菌株ごとに特異性がある。イネに病原性を示し得ない菌株(非病原性株)は、イネによって認識され、イネに抵抗反応を誘導する。これまでに、菌の鞭毛蛋白質であるフラジェリンが菌の認識にかかわっていることを明らかにしているが、今回、非病原性菌株と病原性菌株のフラジェリンを大腸菌で発現させ、発現タンパク質について、イネ培養細胞に抵抗性反応を誘導するかどうかをしらべた。その結果、発現フラジェリンは、どちらも、抵抗性反応を誘導した。このことは、両菌のフラジェリンの機能の違いが、アミノ酸組成の違いでないことを示している。 2、粘液細菌のシグナル分子に関する研究 子実体誘導因子であるstigmoloneと、飢餓条件、および、それによって誘導される遺伝子群の関係を調べた。子実体形成に関わりがあるとされてきた飢餓の認識に関わる(p)ppGppの合成酵素であるRelAとその欠損が子実体形成に影響するとされているcsgAについて、それらの遺伝子を単離し、欠損株、恒常的発現株などを作成することで、両遺伝子の子実体形成への関わりを検討した。RelAの欠損株では、Stigmoloneの生産能がなくなったばかりか,欠損株ではstigmoloneの添加によっても子実体形成は回復しなかった。このことからRelAはフェロモン合成能ばかりでなく、その受容能の獲得にも関わっていると結論した。また、csgAの欠損株、恒常的生産株の実験からcsgAはstigmoloneの合成を促進していることを明らかにした。しかし、csgAのmRNA自体は、栄養飢餓によって誘導されるが、光によっては誘導されないことを示した。
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