研究課題
各種阻害剤を用いた解析により、アミノ酸の欠乏によるIGFBP-1遺伝子の転写促進効果には、PI3キナーゼおよびMAPキナーゼ系が関与していることが明らかとなった。また、タンパク質栄養の悪化に伴う同遺伝子の転写促進において、転写因子USF-1、USF-2およびHNF-3(肝細胞転写因子)がIGFBP-1プロモーターのアミノ酸応答領域への結合量の変化によることがわかった。この増加は、これらの転写因子の量がタンパク質栄養に応答して増加することによることも明らかにした。特に、HNF-3にはα、β、γの3種類在るが、それぞれがインスリン、グルココルチコイド、タンパク質栄養に対して異なった応答を示すこと、この応答は各HNF-3のmRNAの増加によるものであることがわかった。さらに、無タンパク質食摂取によって、インスリン受容体の基質であるIRS-1のセリンリン酸化が激減し、これによって筋肉におけるインスリンへの感受性が上昇することがわかった。また、翻訳開始制御の主要因子である4E-BP1(翻訳開始因子4E(eIF4E)結合タンパク質1)およびS6K1(70-kDa ribosomal protein S6 kinase)に注目し、ロイシン経口投与後の肝臓および骨格筋の4E-BP1およびS6K1のリン酸化状態を経時的に解析した。その結果、両組織においてロイシン投与1時間後に4E-BP1およびS6K1のリン酸化は最大となった。骨格筋では糖尿病ラットにおいても正常ラットと同様に4E-BP1familyおよびS6K1のリン酸化が刺激されたが、肝臓では糖尿病ラットにおいてロイシンによるリン酸化刺激が消失した。以上のことから、ロイシンはインスリン非依存的に骨格筋の翻訳開始段階を刺激し、ロイシンの作用には組織特異性があることが明らかになった。
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