前年度で転写因子USFがIGFBP-1遺伝子のアミノ酸への応答に重要であることを明らかにしたが、USF量の変化は翻訳以降のレベルで起こることがわかった。一方Forkhead型転写因子HNF-3の関与についても明らかとなったが、本年度は他のforkhead型因子FKHRやAFXもタンパク質やアミノ酸に応答する転写因子であること、そしてIGFBP-1プロモーターを制御することを明らかにした。ロイシンによるIGFBP-1遺伝子の転写抑制にいたるシグナルについて、新たに細胞内へ入り得ないロイシン誘導体(Leu-MAP)を用いた解析を進め、細胞外でアミノ酸の有無を感知する機構の存在を示唆する結果を得た。細胞内での感知のシグナルとは独立した機構であることを各種阻害剤を使った結果より明らかにした。タンパク質栄養による翻訳制御機構についても多くの新たな展開があったが、特に新規翻訳制御因子である4E-BP2および4E-BP3がその遺伝子発現レベルで制御されていること、翻訳抑制因子Hsp27がアミノ酸バランスに応答することを初めて見出した。 アミノ酸はインスリン受容体の基質(IRS)の活性を抑制することが知られているが、この現象はinvivoでも起こりうることを初めて明らかにした。すなわち、無タンパク質食などにより血中アミノ酸のバランスが変化することによりIRS-1およびIRS-2のセリン残基のリン酸化の減少と活性の上昇が生じること、IRS-2についてはmRNAレベルで変化することが明らかとなり、アミノ酸シグナルとインスリンシグナルの新しいクロストーク機構を見出した。
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