研究概要 |
本年度は,まずマウスリンパ球培養系を用いた抗体産生調節因子の機能検定系を確立した,さらに,ビタミンE関連物質であるトコフェロールおよびトコトリエノールのサイトカイン産生調節機能について検討し,10μM以上の処理濃度でα-トコフェロールがTNF-αおよびINF-γ産生を促進するが,γ-トコフェロールは促進活性を示さないこと,トコトリエノールは10μM以上の処理濃度ではこれらのサイトカインの産生を強く抑制することを見出した.また,ラットへの摂食実験を行い,トコフェロールは各種臓器に輸送されるが,トコトリエノールは血中に放出された後,免疫組織および脂肪組織に急速かつ特異的に吸収されることを明らかにした. 共役リノール酸摂食実験においては,ラットリンパ球のIgAおよびIgG産生能を0.25%以下の低用量で活性化し,抗アレルギー効果および生体防御系活性化効果を発現することを明らかにした. 魚油摂食実験においては,95%以上の純度を有するエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)エステルを2%レベルで摂食させることにより,EPAがDHAより強い抗アレルギー効果および脂質代謝調節機能を発現することを明らかにした.EPA摂食は,リン脂質のアラキドン酸の割合を顕著に低下させ,EPAの割合を顕著に増加させた結果,肥満細胞のLTB_4産生能を顕著に低下させるとともに,LTB_5産生能を顕著に増強した.これらの多価不飽和脂肪酸の摂食によるIgE産生能の上昇は観察されず,細胞実験結果から懸念されたアレルギー促進効果は高用量の魚油摂食によっても発現しないことが明らかとなった.また,他のn-3系多価不飽和脂肪酸は投与しなかったにも関わらず,DHA摂食によりリン脂質のEPAの割合が増加する傾向が認められたことから,生体内でDHAがEPAに変換される可能性を示した.
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