研究概要 |
本年度は,リンパ球の抗体産生能に及ぼす光照射の影響について検討し、光照射がマウスリンパ球の抗体産生を強く抑制し、光増感剤であるローズベンガル共存下ではその作用が強くなること、α-トコフェロール共存下ではこの作用が抑制されることを見出した。また、α-トコフェロールおよびトコトリエノールの摂食実験を行い、トコトリエノールがα-トコフェロールより強い血清脂質改善効果および抗体産生増強効果を発現することを見出した。多価不飽和脂肪酸については、γ-リノレン酸の免疫調節機能について動物レベルで検討し、高用量の投与によっても4-シリーズロイコトリエン産生の上昇は起こらないこと、ジホモ-γ-リノレン酸の蓄積を誘導すること、免疫組織のジホモ-γ-リノレン酸レベルとプロスタグランジンE_1産生能との間に相関が認められないことなどを明らかにした。食物繊維の免疫増強効果については加齢の影響について検討し、加齢ラットでは水溶性食物繊維の血清脂質改善効果および抗体産生増強効果の発現が低下することを見出した。若齢ラットで認められた脾臓リンパ球の抗体産生能の増強は加齢ラットでは認められず、腸間膜リンパ節リンパ球においてのみ認められたことから、加齢ラットでは水溶性食物繊維の作用部位は腸管免疫系であることが示唆された。食餌タンパク質の免疫調節機能については食餌脂肪との複合作用について検討し、大豆タンパク質がカゼインより強いLTB_4放出抑制効果を発現すること、食餌脂肪とは異なり活性発現にアラキドン酸レベルの低下を必要としないことを見出した。これらの結果は、種々の食品成分が脂質代謝および免疫調節機能を発現すること、その生理活性の発現において互いに干渉することを示唆している。食品成分の生体調節機構の解明において、この相互作用の解明が重要になるものと思われる。
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