研究概要 |
シベリア・アカマツ林での解析を行い,カラマツ林の特性と比較した.樹冠上熱収支の季節変動は特に春期に両者の間で大きな相違があることが示された.また,Jarvis型群落コンダクタンスモデルのパラメータの最適化を行った.その結果は,カラマツ林と近いものであった.既存の研究成果も用いてJarvis型群落コンダクタンスモデルのパラメータと気候値の関係を検討したその結果,飽差と気温に対する反応のパラメータは気候値との間に明確な関係が認められた.このことは,森林は植生タイプが異なっても同様の機構化に成立していれば,環境因子に対して類似した反応を示すことを示唆している.東シベリア南部山岳地域のカラマツ、カンバを主体としたタイガ林からなる小流域試験地において水・熱収支に関する現地観測を行った。試験地における暖候期(2001、4/19-10/13)の蒸発散量は127.5mmであった。そのうち、林床面からの蒸発が約60%を占めた。樹冠遮断量は降水量の19%であった。ボーエン比は融雪直後の4月終わりから6月初めの開葉終了までは2程度、その後1前後となり、紅葉がが始まる8月半ばより再度増加する季節変化を示した。 林内忌引き商都水循環特性に関しては,以下の知見が得られた。0次谷最上部に位置し尾根を含む小集水域内の谷線上の3点(本集水域の末端,中腹部,尾根部,末端と尾根部の比高は約30m)において,林床面蒸発量(秤量法),林床面上気象要素,地温および土壌水分吸引力を観測した.その結果,蒸発量の斜面分布は,土壌水分が十分にある場合は,風速の斜面分布の影響を強く受け,土壌が乾燥してゆくと風速の斜面分布に加えて,土壌水分の分布による蒸発効率の斜面分布の影響を受けることが示された. また下部境界層構造に関しては,以下の知見が得られた.従来、森林樹冠上の顕熱・潜熱フラックスは粗度層から接地境界層下部においてのみ観測されてきた。しかし森林樹冠上の接地境界層上部での顕熱・潜熱フラックスの時空間分布については十分な知見が無かった。そこで本研究では、レナ河近傍の東シベリア・タイガ帯において、観測タワーによる森林樹冠上(接地境界層下部)の顕熱・潜熱フラックスを測定するとともに、別途、航空機を用いて接地境界層上部〜混合層下部における顕熱・潜熱フラックスの時空間分布を測定した。その結果、レナ河近傍のアカマツ林では、局地循環が顕熱・潜熱フラックスに大きく影響を及ぼしていた。
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