研究課題/領域番号 |
12460068
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷 誠 京都大学, 農学研究科, 教授 (00314245)
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研究分担者 |
小杉 緑子 京都大学, 農学研究科, 助手 (90293919)
小杉 賢一朗 京都大学, 農学研究科, 助手 (30263130)
大手 信人 京都大学, 農学研究科, 助教授 (10233199)
文字 信貴 大阪府立大学, 農学部, 教授 (20111982)
杉本 敦子 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (50235892)
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キーワード | 炭素循環 / 二酸化炭素フラックス / 簡易渦集積法 / ヒノキ林 / 樹液流動 / ゲル濾過法 / 溶存炭素 / 森林水文 |
研究概要 |
桐生試験地のヒノキ林内のタワーにおいて、種々の手法により森林・大気間のフラックス観測を行った。エネルギーフラックスにおいては、顕熱が乱流変動法、ボーエン比法、傾度法でおおむね一致したが、潜熱においては、クローズドバス乱流変動法による値が小さかった。そこで、潜熱についで、高周波数域での変動成分減衰が少ない手法であるオープンパス法との比較し、従来に比べて不規則な変動が少なくなる補正方法を開発した。この補正方法では、低い植生での潜熱コスペクトルを大気安定度の関数として表す手法を森林に適用ししたものである。一方、CO_2フラックスについては、クローズドパスと簡易渦集積法のデータがおおむね一致し、この森林での長期連続推定が可能であることが確認された。また、開発予定のSPACモデルの検証を目的として、ヒートパルス法を用い、蒸散による樹液流動を測定した。その結果、夏の無降雨時に蒸散抑制が生じていたことが明らかになるとともに、この抑制が土壌水分の影響によるものであることが簡易なモデルの適用を通じて示唆された。 また、桐生試験地の水流出過程にともなう炭素動態を把握するため、渓流に流出する粒状有機態炭素(POC)、溶存有機態炭素(DOC)、溶存無機態炭素(DIC)の量を長期継続測定するとともに、流出炭素の7割を占めるDOCについて、これを構成する溶存態有機物(DOM)の流出にともなう変質過程を、ゲル濾過法等を適用して検討した。その結果、土壌中の鉛直浸透過程で吸着によって高分子有機物が選択的に減少し、下層には腐植様物質に近い難分解性の低分子有機物が残ってくることがわかった。 以上のように、森林における炭素循環について、大気・森林間のフラックスを精度良く把握する手法、渓流への流出量を量的に測定し、かつ、その質的な特徴を明らかにする手法を開発し、いくつかの新しい知見を得た。
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