研究概要 |
これまでに、2つの実験を実施した。 一つは海岸砂地土壌と内陸山地土壌を室内に持ち帰り、その中に生息する菌根菌を比較するため、これらをそれぞれ一定量入れた鉢に、アカマツとクロマツの無菌実生を併せ植え込み、これら実生苗に形成される菌根を顕微鏡下で比較検討した。この際、菌根形成に及ぼす水分ストレスの影響を調べるため、潅水条件を3段階に設定して、この点についても比較した。実験の結果、海岸砂地土壌と内陸山地土壌の間では、形成される菌根相に大きな違いがあったが、アカマツとクロマツの間にはそれほど顕著な菌根相め違いはなかった。水分条件は、菌根形成に顕著に影響し、水分ストレスが大きい場合には、菌根形成は阻害された。しかし、水分ストレス条件下でも少数の菌根が形成され、それらは概ね外部菌系を発達させたタイプの菌根であった。このように,水分ストレスに適応したタイプの菌根が選択的に形成されることにより、寄主マツ類は乾燥条伴下でも生息できるものと考えられる。 二つ目の実験として、酸性雨に被曝させた実生マツ苗に対するマツノザイセンチュウの接種試験を実施した。ただし、この実験では線虫接種密度を3段階に変えることにより、その後の、マツ苗の発病過程、マツ苗中での線虫の増殖過程を定量的に比較解析した。得られた結果は興味深いもので,酸性雨は、病原線虫の侵入に対する寄主側抵抗を促進する一方で、いったん侵入した線虫の増殖を促進するという二面性を示し、環境因子としての役割の複雑さが明らかになった。
|