研究課題
今年度は、以下の3つの項目について研究を行った。(1)スギおよびヒノキ苗木の材質測定苗木の段階におけるヤング係数を測定した結果、以下のことが分かった。(1)スギやヒノキの苗木でも、既報と同様苗木のヤング係数を測定することができた。(2)苗木の段階でも、スギのヤング係数よりは、ヒノキのヤング係数の方が大きいことが分かった。(3)生長の因子である、樹高および地際直径とヤング係数との関係をみると、樹高や地際直径とヤング係数の間には相関関係がないことが分かった。(4)したがって、生長がよくヤング係数の大きな苗木を選抜育種することも可能と考えられる。(5)地際から遠くなるほど、ヤング係数が大きくなる傾向が見受けられた。以上のことから、苗木の段階で、ヤング係数を基にした選抜育種や、森林におけるスギやヒノキのヤング係数マップの作成など、スギを構造材として利用して上で、エンドユーザーを考慮した育成が可能となることが期待できる。(2)試験地の設定九州大学、愛媛大学、三重大学、静岡大学、新潟大学、北海道大学の各演習林における試験地の設定を行った。(3)RAPD法近年、スギのcDNAライブラリーから得られたシークエンス情報を利用して数多くの共優性DNAマーカーが開発された。これらのDNAマーカーを用いて全国から収集したスギ25集団に対して解析を行った結果、25集団は日本海側と太平洋側の集団に大きく2分され、これまで形態的特徴からいわれてきたウラスギ系統とオモテスギ系統の2系統がゲノム上も分化している可能性が高いことが示唆されている。今回実験に供される5品種の内、オキノヤマスギ、タテヤマスギ、サドガシマはウラスギ系統に含まれる品種であり、サンブスギはオモテスギ系統の品種であることを考えると、ウラスギ系統の3品種とオモテスギ系統のサンプスギは遺伝的に離れた集団である可能性が高い。