研究課題/領域番号 |
12460074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 尭介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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研究分担者 |
勝亦 京子 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 助手 (70313319)
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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キーワード | リグニン / 土壌改良剤 / アルミニウムイオン / 森林 / 酸性土壌 / アルカリ性酸素酸化 / 錯体形成 / 根 |
研究概要 |
地球規模で進む森林の荒廃を防止し、再生させることは、地球環境を保全するためのみならず、我々人類の生活に必要な木材資源を永続的に確保するうえでも極めて重要であるが、地球各地に広がる酸性土壌のために、その取り組みは著しく困難なものとなっている。このような土壌においては、樹木は健全な生育を示さないといわれており、森林の伐採跡地が広大な草地として熱帯地域でしばしば放置されでいるが、その主要な理由の一つとなっている。酸性土壌における樹木の生育阻害は、多くの場合、土壌中に一定濃度以上含まれるアルミニウムイオンに原因しており、健全な土壌では表土中の腐植物質がこれを捕捉し、阻害を抑えていると考えられている。申請者等は、これまでの研究において、パルプ製造時の副産物として得られる廃液グニンを出発物質とし、これの化学的改質によって、植物のアルミニウムイオンによる生育阻害を抑制する機能を有するリグニン系土壌改良剤の開発に成功している。本研究においては、このリグニン系土壌改良剤とアルミニウムイオンとの相互作用の解明と、その存在がアルミニウムイオンと根端生長組織との相互作用に及ぼす影響を明らかにし、これによって、リグニン系土壌改良剤による植物のアルミニウム生育阻害機構を解明することを目的としている。 初年度の検討の結果、アルミニウムイオンの根先端部への吸着が、化学改質リグニンの存在によって明瞭に阻害されることを各種の改質リグニンの場合について確認することができた。アルミニウムイオンと化学改質リグニンとの相互作用に関しては、両者の共存の結果放出される著量の水素イオンが、アルミニウムイオンとの間の錯体の生成によることを、確認した。AL-NMRスペクトルによる錯体形成状態にあるアルミニウムイオンの観察を詳細に行っており、結合状態によって異なったスペクトルが出現し、あるいはスペクトル自身が消失することを見出しており、AL-NMR法によるアルミニウムイオンの存在形態の追跡が可能であるとの予備的結論を得ている。
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