研究課題/領域番号 |
12460074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 尭介 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30012074)
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研究分担者 |
勝亦 京子 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 研究機関研究員 (70313319)
新谷 博幸 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (30282693)
松本 雄二 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (30183619)
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キーワード | リグニン / 土壌改良剤 / アルミニウムイオン / 森林 / 酸性土壌 / アルカリ性酸素酸化 / 錯体形成 / 根 |
研究概要 |
世界の農業利用可能陸地面積の42%にも達しているとされる酸性土壌地域の存在は、今後増大する食糧ニーズにこたえるためにも極めて深刻な問題である。また、熱帯地域における森林面積の減少の原因も、過度の森林伐採が引き金であるとはいえ、基本的には酸性土壌がその原因にあると考えられている。 これらの地域における植物の生育阻害の要因には様々なものがあると考えられるが、土壌中のアルミニウムの過剰によるものが最も多く、かつ深刻であるといえる。 健全土壌において表土中に存在し、土壌を適正に維持する機能を有していると考えられている腐植物質が植物細胞壁構成成分、とりわけリグニンに由来すると考えられることから、担当者らはパルプ製造排液から分離した工業リグニンの化学的変換によって腐植物質と同等の機能を有する土壌改良剤を開発することを目的として各種の検討を続けている。本研究では、化学改質リグニンがアルミニウムイオンとの間で錯体を形成することと、これによってアルミニウムイオンの植物に対する生育阻害が著しく抑制されることを明らかとした。今年度は、前年度の検討で明らかとなった各種の酸性基の分別定量法について更に詳細な検討を進め、処理条件とそれぞれの酸の生成量および生育阻害抑制機能との関係から、芳香核構造の開裂によって導入されると考えられる弱酸性基が機能の点からは最も重要であることを明らかにした。さらに、以上のような知見を踏まえて、パルプ漂白工程のアルカリ性酸素脱リグニン工程排水成分が、同様な機能を有するか否かについての検討を行い、排液成分中の高分子量区分、中分子量区分には同様の性質が期待できることを明らかにした。低分子量区分については、極く少量の添加においては有効に作用することが認められてものの、添加量を増大するにしたがって負の影響が生じることが確認された。その原因にの詳細については不明であるが、低分子成分がリグニン分解物由来であるか、工程排水に特徴的なものであるかについては早急に明らかにする必要があるといえる。
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