研究分担者 |
JOHN R. Bower 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (10312406)
磯田 豊 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 助教授 (10193393)
斎藤 誠一 北海道大学, 大学院・水産科学研究科, 教授 (70250503)
山本 潤 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助手 (10292004)
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研究概要 |
本研究では,スルメイカを対象として,短・中長期の気候変化に伴う再生産-加入海域の物理・生物的環境の時空間的変化が,再生産-加入過程を通して,どのように資源変動へと影響しているかを明らかにすることを目的とした。平成14年度の成果は以下の通りである。 1.平成14年11月に,隠岐諸島周辺海域の海況環境とふ化幼生の層別定量採集を実施し,ふ化幼生の成長に伴なう移動・拡散・収斂を調査した。その結果,対馬北東の陸棚海域由来と推定されるふ化幼生の隠岐諸島周辺海域への輸送が確認された。 2.秋の対馬海峡周辺を含む日本海南西海域において,過去数年間のふ化幼生分布と海流構造,混合層深度(MLD)の発達との関係を調べ,密度躍層が中層に存在する海域でのみふ化直後の幼生が出現した。この結果から,スルメイカ卵塊がMLD下部に滞留できる海域がふ化可能海域と規定できた。 3.1984-2000年の漁獲量変動と,海洋環境のレジームシフトに伴う再生産可能海域の冬季の拡大・縮小を調べ,1989年-2000年は,冬季再生産可能海域が対馬海峡まで拡大しており,これが現在のスルメイカ資源の多さと一致していることを確認した。 4.1988/1989年の寒冷レジームから温暖レジームへの海洋環境変化に伴なうスルメイカ資源の増加に着目し,秋-冬のアリューシャン低気圧指数(ALPI),1,2月の東シナ海の海面風力・風向,海面温度との関係を調べた。その結果,1980年後半から1990年代前半の冬季季節風の弱まりと海面気温上昇に伴なうMLDの経年変化が、同時期の冬生まれ群の急激な増加と一致し,特に1月の風の強さが2月の再生産の成否に影響することを見出した。
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