研究概要 |
1)「やせ病」トラフグの腸管に寄生する粘液胞子虫の胞子と栄養体について寄生虫学的検討を行った結果、新種Myxidium fugu,新種Leptotheca fugu,およびMyxidium sp.の3種類を記載した。組織学的観察により、M.fuguは腸管上皮細胞に付着した状態で発育していたが、L.fuguとMyxidium sp.は腸管上皮組織内に侵入して発育することがわかった。L.fuguとM.fuguの栄養体内に観察される超寄生微胞子虫について光顕による形態観察を行った結果、両者は別種である可能性が示された。 2)上記3種の粘液胞子虫は魚体内でほとんど栄養体として観察され胞子形成は稀であったが、Diff-QuikとUvitex2Bによる染色性および発育部位の違いにより、栄養体のみであっても種の識別が可能であった。トラフグ腸管上皮のスメア標本および腸管組織のパラフィン切片標本により各種の形態および発育の特徴を観察することで、胞子形成に到らない感染初期の段階でも診断できる方法を開発した。 3)光顕による病理組織学によって、Myxidium fuguは微胞子虫の超寄生の有無に関わらず腸管にほとんど病理変化は認められなかった。M.sp.とLeptotheca fuguは重篤寄生するとそれぞれ、上皮の剥離と上皮の崩壊を引き起こした。微胞子虫の超寄生を受けたL.fuguでは病理変化がより強い傾向にあった。 4)感染発病魚では腸前半部の水吸収能が、非感染魚に比して有意に低く、浸透圧調節機能障害が明らかであった。感染発病魚の血漿及び尿浸透圧は、非感染魚より有意に高い値を示した。感染発病魚の腸内液のCl濃度は、非感染魚の1.5倍と高い値を示した(P<0.01)。腸内液K濃度も非感染魚が感染魚より有意に高い値を示したが、Na濃度は両者間に有意差が認められなかった。感染魚において、肝臓の高度な萎縮が認められた。
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