研究概要 |
1)「やせ病」トラフグの腸管に寄生するMyxidium属粘液胞子虫(Myxidium fugu, Myxidium sp. TP)の感染が、病魚腸管の経口投与、感染魚との同居、感染魚飼育水槽からの排水曝露のいずれでも成立し、生け簀賓内で魚から魚へ伝播することが示された。一方、Leptotheca fuguについても同様の方法で感染実験を試みたが全く感染成立しなかったことから、L. fuguの感染は放線胞子虫由来と考えられた。 2)Myxidium sp. TPの経口投与による人為感染系において発育動態を調べた結果、虫体が腸管上皮組織内に侵入して分裂増殖し腸管後部まで寄生を拡大するのに20℃では1ヶ月間を要したが、15℃では全く発育しなかった。また、経口投与後15℃で3週間飼育した後、20℃に昇温するとMyxidium sp. TPの発育が見られ始めたことから、15℃では潜伏感染の状態であることが証明された。感染魚は20℃で3週目から摂餌が低下し、6週目以降「やせ病」が発生して慢性的に死亡した。病理組織学的には、20℃1ヶ月後から腸管絨毛構造の乱れや腸管上皮の剥離等、自然感染発病魚で観察される病変が再現された。 3)感染発病魚の腸管の水分吸収能を調べた結果、「やせ」外観症状の程度(やせ度)により水吸収能の差が認められた。感染発病魚の血漿浸透圧および尿浸透圧は非感染魚より有意に高かった。また、肝機能の指標となるLDH, G0T, GPTについて、感染発病魚では非感染魚に比して顕著に低下していたことから、「やせ病」発病魚は肝臓機能障害を起こしていることが示唆された。 4)前年度の成果と合わせ、トラフグ「やせ病」の原因生物は粘液胞子虫Myxidium sp. TPとLeptotheca fuguであること、それらの伝播様式や発育動態は種類によって異なること、病原粘液胞子虫の寄生により消化管からの水分吸収が阻害され浸透圧調節不全に陥って「やせ病」が起こること等が明らかになった。
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