研究概要 |
本研究では,水温,塩分など異なる環境下で飼育した仔稚魚の生殖腺におけるアポトーシスの誘導に関わる分子を解析し,アポトーシスの性分化への影響を解明する。 まず、遺伝的全メス系統(XX)および野生型を用いて,ゼブラフィッシュの性分化過程を解析した結果,遺伝的全メス系統(XX)の表現型メスの割合は,98.3±2.4%であった。これに対し,野生型の表現型メスの割合は,47.5±7.5%であった。TUNEL染色の結果,最も劇的な生殖腺細胞でのアポトーシスは,孵化後23から25日目のオスの生殖腺で,アポトーシスを誘発している早期双糸期卵母細胞が総生殖腺細胞のうち0.93±0.21から1.49±0.23%のTUNEL陽性卵母細胞が観察された。その後,卵母細胞は孵化後29日目までに完全に消失した。また,オスの個体でアポトーシスを誘発している卵巣腔の体細胞が,孵化後23から35日目に観察された。孵化後15日目になるとすべての個体で早期双糸期卵母細胞でアポトーシスが誘発され,孵化後19日目になるとその数は増加した。この結果から,オスの性分化過程における卵母細胞の消失が,アポトーシスの誘発により生じることが明らかとなった。生殖細胞のアポトーシスが,性分化が誘導されると考えられる。 一方、形態学的に未分化な生殖腺を持つ個体の性判別するために、ペヘレイを用いた連鎖解析による性特異的DNAマーカーの探索の準備を進め、(CA)n繰り返し配列を含むマイクロサテライトマーカーの単離を試みた。現在までに約50個のマイクロサテライト陽性クローンを単離し、解析を進めている。さらに、生殖細胞と通常の体細胞を判別するために、生殖細胞特異的マーカー(vasa mRNA)に対するプローブを開発した。最初にニジマスを用いて、vasa遺伝子のニジマスホモログcDNAを単離した。続いて得られたcDNAを鋳型に用いてRNAプローブを作製し、ニジマス初期胚に対してホールマウントin situハイブリダイゼーションを行った。その結果ニジマス初期胚においてもvasa遺伝子が生殖細胞系列特異的に発現していることが明らかとなり、本遺伝子の発現がPGC同定の際のマーカーとなり得ることが示された。
|