研究概要 |
1)アカフジツボにおける幼生時期特異的遺伝子の探索:キプリス幼生に関与する遺伝子がいつの時期から発現し,どのようなパターンで消長するかは全く明らかではない。そのため,ノープリウス2期,4期,6期,およびキプリス各幼生からmRNAを抽出し,Suppresion subtractive hybridization法を用いて,6種のsubtraction cDNA libraryを構築した。現在,マクロアレイを用いたDiiferential screeningにより,疑似陽性クローンを排除し,真に時期ごとに発現量が大きく異なるクローンの選抜に勤めている。 2)アカフジツボキプリス幼生に発現しているカルシウムチャネルの同定:電気生理学的検討により,アカフジツボキプリス幼生のセメント腺では電位依存性のカルシウムチャネルが発現し,セメント分泌に重要な役割を果たすことが推測されている。しかし,薬理学的手法などで,完全な同定ができなかったため,キプリス幼生のmRNAからRT-PCR法を用いて,カルシウムチャネルの断片の増幅を試みた。その結果,L-type, P/Q typeと相似した2種類の遺伝子の存在を確認した。 3)アカフジツボキプリス幼生に発現しているアクチン遺伝子の構造:アカフジツボキプリス幼生のセメント腺では,ドーパミン投与直後に一見,顆粒の開口分泌を可能にさせるかのような劇的な形態変化がおこる。特定のアクチンがこの現象に関与しているか否かを明らかにするため,キプリス幼生のmRNAからRT-PCR法を用いて,キプリス幼生に存在するアクチン遺伝子の配列決定を行った。その結果,2種類のアクチン遺伝子を同定することができた。,その内の1種は,幼生の各時期を通し,安定して発現している遺伝子と推測され,定量PCRの指標として,使うことができると思われる。
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