研究課題
シゲミカタトサカレクチンSLL-2の内部配列を用いて配列分析した結果、シグナルペプチド部分をもつ94アミノ酸残基からなることが明らかになった。この配列にはアミノ末端部分配列を含め、SLL-2のペプチドフラグメントの配列分析で得られた配列の全てが含まれていた。一方、質量分析の結果はおよそ13000とSDS-PAGEで得られる15Kと近い値が得られたが、アミノ酸配列から算出される分子量とはおよそ3Kほどの差があった。一方、糖分析では微量の単糖類が認められるものの、その量は3Kの差を説明しえるものではなく検討中である。SLL-1については精製を行っているが、まだ分析に供するに十分量を得ていない。高濃度のカルシウムイオン存在下におけるSLL-2立体構造の変化の可能性についてはCDスペクトルで検討したが、特に差は認められなかった。しかし、ウマ血球に対する凝集活性の増強が確認されたので、何らかの分子構造変化は存在するものと考えられた。石灰化への関連を示唆するSLL-2の炭酸カルシウム結晶化阻害に要する濃度は1〜2mg/30ml程度と推定され、SLL-2存在下では炭酸カルシウム結晶の成長が阻害されるとともに微細な楕円形の結晶が観察された。沖縄県座間味村付近海域で採集した八放サンゴ類について抗SLL-2血清によるSLL-2類似成分の検索を行った。交差反応が陽性のものについてはさらにSDS-PAGE後、ウェスタンブロッティングし、性状を調べた。その結果、多くの八放サンゴ類がスポットテストの段階では抗SLL-2血清に反応したが、その多くは電気泳動ゲル上端にとどまる高分子成分でありSLL-2との関連性は少ないと考えられる。これらの結果はSLL-2がシゲミカタトサカなどSinularia属に特異的なレクチンであることを示している。