研究課題
本研究の目的は、農業と食品加工・販売との結合による地域産業の複合化が進展している和歌山県田辺市および南部郷(南部町・南部川村)の梅産地に注目し、「地域産業複合体」の形成と展開が地域社会の維持や活性化にいかなる役割を果たしているかを解明することである。この目的に即し、本年度は(1)同産地における梅生産の動向に関する資料整理・統計分析、(2)梅の生産・加工・流通・販売の実態や問題点についての総合的・体系的把握、(3)「ウメ産業」と総称される地域産業の構造分析を重点課題とした調査研究活動を展開した。調査研究活動の具体的内容としては、田辺市農林課、南部川村うめ課、21うめ研究センター、日高・西牟婁農業改良普及センター、紀南農協、みなべ農協、紀州田辺梅干協同組合、紀州南部梅干協同組合等に対して数次にわたってヒアリングを行うとともに、梅生産農家を対象にしたアンケート調査を実施した。また、調査報告会や研究会を数回行った。こうした調査研究活動によって下記のような実績を得ることができた。(1)梅の生産・加工・流通・販売に関するデータを収集・整理し、「ウメ産業」の総合的・体系的分析の基礎資料を獲得した。(2)梅生産農家へのアンケート調査によって梅生産の現状、問題点、将来方向等を考察する基礎資料を得た。(3)関係機関・団体等へのヒアリングを通じ梅を基軸にした「地域産業複合体」が地域社会・経済の基盤となっていることを確認した。(4)同時に「地域産業複合体」は現在幾多の深刻な問題点を抱えており、その打開・解消が焦眉の課題になっていることを確認した。