研究概要 |
本研究では,東北・近畿・中四国・九州の各地の調査を通じて,下記の大きく四つの知見を得ることができた。 1.第一に,糞尿処理サービスは有料化が望ましい。第二に,堆肥への不足払い価格政策により,堆肥化施設への投資額を補助する政策の方が望ましい。第三に,堆肥の広域流通システム整備により,社会的経済余剰を増加できることを明らかにした。 2.家畜排せつ物の処理システムは,地域の畜産経営の立地条件に応じて,分散処理方式,センター集中方式に分化することを整序した。また,中山間においては,和牛繁殖経営の放牧を採り入れた資源循環型の営農類型が優れていることを明らかにした。 3.環境保全型農業に前向きの姿勢を示すJA組合長が8割ほど存在しており,今後に希望を抱かせる結果であった。事例部会の取り組みは,地道な努力が着実な成果を上げてきたものであった。環境保全型農業の推進では,行政と一体的に取り組むところが多かった。今後は,行政が,総合的な視点より資源循環型地域活性化システム作りのビジョンを提示し,その中でJAは遂行可能な役割を果たしていくという,明確な機能分担が必要である。 4.ドラマ理論およびその分析用具である敵対分析法を農水省のガイドライン設定前後における有機農業振興の政策分析に適用した。消費者団体,一般消費者,一般(有機)生産者そして行政当局の各主体の思惑は様々に交錯したが,結果的には行政当局のイニシアティブで生産者寄りに決着した。今日,BSE問題や食品会社の不祥事によって行政当局は極めて強い批判を受けたが,このような状況の変化によって,各キャラクターのポジション・選好順位が変化し,結果的に政策の方向が大きく変化することが予想された。
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