研究概要 |
本研究は河川環境保全を目的とした多自然型河川工法において用いられる各種工法の曝気性能を評価し,それをモデル化することである.初年度である今年は,対象としていた河川の河川工事が長引き,予定通り現地観測を実施することが出来なかったが,モデル化の進展状況と少ない観測事例から得られた結果について以下に報告する. 1.モデル化 堰や砂礫河床等の曝気性能を十分な精度でモデル化するには,まず流れのモデル化が必要となる.そのような場所での流れは射流と常流が混在した複雑な流れとなるため,それらを適切に再現できる数値スキームを採用する必要がある.これについては流れの方程式の移流項にRoeスキームを採用することで対処した.また,複雑な地形を適切に再現するために,Quadtree格子を採用し,数値モデルを完成させた.この成果は,雨水資源化システム学会誌に掲載された.本モデルを生態系保全に深く関わる河川構造物である魚道に対して適用し,うまく流れを再現することを確かめた.今後はこのモデルに曝気効果を表現するサブモデルを組み込み,溶存酸素分布を再現するモデルを作成する予定である. 2.現地観測結果 道後平野を東西に流れる重信川の下流の砂礫河床区間(約2km)において,砂礫河床区間での曝気性能を検討するために1週間連続の現地観測を行った.溶存酸素濃度は晴天日,曇天日共に明確な日周期があり,日中にピークをもち夜間は比較的一定値を保つことがわかった.上流側のピークは午後1時頃にあらわれ下流側は3時頃となる.下流の方がピークの濃度が高くなり,流下する間に曝気されていることが伺える.ただ上流側の計測地点は水深が浅く,下流側は堰の直上流で,流れが少し停滞気味であり,溶存酸素変動に及ぼす付着藻類の影響が大きくなる可能性もあるので,その影響を差し引いて考えなければならない.これらは来年以降に検討する.
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