研究概要 |
河川横断構造物(堰や落差工)は利水と治水の役割のみでなく,曝気効果により河川の自乗作用を側面から支える働きがあるものもある.単純落差工による曝気効果については,現在注でに多数の研究が発表され,定量的に評価するモデル式なども多数提案されている.しかしながら,河川に存在する構造物には単純落差工のような単純な構造物のみではなく,複雑な形状のものも多くみられる.そこで,本研究では,愛媛県の松山市に存在する単純落差工ではない河川横断構造物の3個所を選定して,現地観測によりそれらの曝気効果を推定し,過去に提案されている単純落差工のモデル式(中曽根氏が提案したモデル式)を援用して,それらのモデル式の適応性をみるとともに,対象構造物が単純落差工と比較して,曝気効果が大きいのか小さいのかを評価した. 対象とした構造物は松山市を流れる内川と小野川と大川に設置されているものである.モデル式で得られた値と実測値から推定された値を比べてみると,3個所とも正の相関が見られ,モデル式が大雑把にみると当てはまることが分かった.しかしながら,各対象構造物により,当然,若干の違いが認められる. その違いは主に構造物の構造に起因していると推定された.つまり,対象とした構造物は,落差が2段になっており,その間が,水平床あるいは斜路となっている.特に斜路の場合は,曝気効果が単純落差と比べて小さくなるようである.ただ,斜路に自然石などを埋め込み,表面に凹凸をつけると,石直上流部での跳水や水しぶき,そして比表面積の増加により曝気効率が高くなると推定された. 近年,生態系への配慮から,単純落差工を緩傾斜の斜路に作り替えるようになってきているが,その場合,曝気効果を考えると,斜面に凹凸を作る必要のあることが,今回の観測から示唆された.
|