研究概要 |
河川横断構造物(堰や落差工)は利水と治水の役割のみでなく,曝気効果により河川の自乗作用を側面から支える働きがあるものもある.単純落差工による曝気効果については,現在までに多数の研究が発表され,定量的に評価するモデル式なども多数提案されている.しかしながら,河川に存在する構造物には単純落差工のような単純な構造物のみではなく,複雑な形状のものも多くみられる.昨年度までに斜路と単純落差工とを比較して,斜路による曝気効果は落差工と比べ小さいことを明らかにした.しかしながら自然石を配置して表面に凹凸をつけた斜路は落差工と同等の曝気能力を持つことが推定されたので,今年度は,2カ所の粗石付き斜路を対象に現地観測を行ない,単純落差工以上の曝気能力を持つことを確認した.曝気効果の増加は粗石の存在による跳水や水の飛散,比表面積の増大によるものである. 粗石の配置密度と酸素輸送効率の関係を調べるため,酸素溶入に最も大きな影響を及ぼしていると考えられる跳水に注目した.粗石に水がぶつかるまでに流れが射流となっていれば跳水が発生すると考えられるので,限界水深が発生するまでの距離と粗石の間隔を比較した.対象とした2カ所の粗石付き斜路の1つは,限界水深が発生するまでの距離と粗石の間隔を比べると粗石の間隔の方が長く,跳水が発生すると考えられるのに対し,もう一方では粗石の間隔の方が短くなるので,跳水が発生しないと判断された.そして,観測結果から計算された酸素輸送効率は,それを支持する結果となった. 限界水深が発生するまでの距離は,当然,流量によって異なってくるので,対象とする河川の平均流量から,効率的な曝気を行なうための粗石の間隔が求められることになる.
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