研究概要 |
本研究は,精密農法(Precision Farming)の実現へむけて,ほ場養分及び植物群落成長の時空間モデルを構築し,これらを基礎にした天候対応型機械運用シミュレータの開発を目的に実施した。本研究ではその手始めとして次のような課題を設定して研究を実施した。 1)ほ場植物生態系成長モデルの構築の課題 耕地における作物-雑草生態系の競争モデル構築のため,供試作物としてシロクローバを選び,前作の異なるほ場にて播種密度を考慮した420個の実験区を設定して1999年秋から2000年夏にかけての冬・夏雑草との生長競争を調査した。前作は,窒素吸収作物であるトウモロコシと窒素固定作物であるクローバであった。いずれの実験区であっても,シロクローバによる雑草抑制効果は認められたものの,その効果には差があった。最終的に,トウモロコシ前作区ではシロクローバが生き残り,シロクローバ前作区では雑草が生き残った。これらの特性をロトカ・ボルテラモデルで表現し,アイソクライン方でその挙動を定式化した。 2)ほ場養分パラメータの連続リアルタイム測定システムの開発の課題 RTK-GPS付のリアルタイム土中光スペクトロメータを試作した。土中深さ20-45cmの任意の深さから土壌反射スペクトルをオンラインで取得し,合わせて正確な位置情報を取得できた。取得できる反射スペクトルは可視光から近赤外にわたる400-1700nmの波長帯域であり,キャリブレーションの結果,水分,土壌有機物,硝酸態窒素,pH,ECの推定がほぼ可能である。位置情報と合わせて,土壌マップの作成が可能となった。 3)ほ場養分パラメータの時空間動態データベース及びモデルの構築の課題 水田2枚と畑地2枚のほ場において,それぞれ2回の実験を行い,延べ8ほ場分のほ場マップを作成した。土壌パラメータのほ場内空間変動及びその時間変化を解析するためのデータベースが蓄積されつつある。
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