研究概要 |
本研究は、貯蔵プロセスおよび栽培プロセスにおいて、高品質な青果物(トマト)を生産するための適切な環境制御法を研究する。貯蔵プロセスでは、温度によりトマトの品質(鮮度)を向上させる実験を行った。まず、温度(5〜45℃)に対するトマトの応答を調べると、呼吸速度と水損失速度は温度の上昇に伴って増加したが、前者はシグモイド曲線的、後者は直線的な関係を示した。また、最初に40℃の高温ストレスを与えると、水損失速度および呼吸速度は顕著に抑制された。次に、ニューラルネットワークによりモデルを構築し、それらのシミュレーションから、遺伝的アルゴリズムを用いて、呼吸速度もしくは水損失速度を最小とする温度操作(最適値)を求めた。最適な8段階の温度操作は最低温度を5℃(5【less than or equal】T(k)【less than or equal】40℃)にすると、{5,5,5,5,5,5,5,5℃}を選び最低温度のみの組合せとなった。しかし、最低温度を15℃(15【less than or equal】T(k)【less than or equal】40℃)にすると、{40,40,15,15,15,15,15,15℃}を選び、最初の2ステップは最高温度(高温ストレス)、その後は最低温度の組合せとなった。一方、栽培プロセスでは、ロックウール粒状綿を利用した養液栽培システムによる高糖度トマト生産のための給液制御の実験を行った。環境要因に基づいた給液制御では、日射量と飽差から推定した蒸散量の積算値に基づいて給液制御を行った結果、設定値が同じであれば給液時の葉の水ポテンシャルはほぼ同じとなり、設定値を変えれば給液時の水ポテンシャルを変えられることを明らかにした。さらに、積算推定蒸散量に直前の日射量を掛ける新たな制御指標を用いれば、夕方、曇雨天時の不要な給液を回避できることも明らかにした。植物生体情報に基づいた給液制御では、葉温指標が給液制御指標として有効であることを明らかにした。
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