研究概要 |
本研究は、青果物(トマト)の栽培プロセスおよび貯蔵プロセスにおいて、高品質化を達成するための効果的・効率的な環境制御法をシステム科学的に究明した。 栽培プロセスでは、まず良い苗を自動的に選別し、次にロックウール粒状綿を利用した養液栽培で給液(水ストレス)制御を行ってトマトの品質向上を試みた。苗の品質をリアルタイム処理で診断できる画像処理システムを開発した。栽培においては、葉温指標(=(非蒸発面温度-葉温)/(非蒸発面温度-蒸発面温度))に基づいて給液制御を行うと糖度8の高糖度トマトが得られた。また、環境要因に基づいて給液制御した場合も、日射量と飽差から推定した蒸散量の積算値(積算推定蒸散量)に基づいた制御指標、さらに、この指標を直前の日射量によって補正した制御指標とも、糖度8の高糖度トマトが得られた。 一方、貯蔵プロセスでは、栽培プロセスでの植物体への水ストレス制御と収穫後の貯蔵性の関連を調べるとともに、温度(熱ストレス)制御により、もっと長い鮮度維持が達成できないかを研究した。栽培プロセスで水ストレスをかけたトマトは糖度が高くなるばかりでなく、収穫後の貯蔵プロセスにおいて水損失が少なくなり、鮮度維持の点から有効であった。果実応答として、新たに追熟度合いを加え、それを果皮色で推定し、温度の対する果皮色の動的特性をニューラルネットワークで同定しモデル化した。温度に対するトマトの呼吸速度、水損失速度、追熟応答を推定できる動的モデルを構築した。さらに、これらのモデルのシミュレーションから、呼吸速度、水損失速度、追熟度合いを最小化する6段階の温度操作パターンを求めた(温度範囲:15-40℃)。最適温度は、1段階のみ(従来法)では最低温度15℃が最良であるが、6段階の組み合わせを考えると、最高温度と最低温度の組み合わせ{40,15,15,15,15,15℃}が最良となった。水ストレス制御を含め、これらの制御は実用化は容易であり、高品質化のためには、栽培での水ストレス制御と貯蔵での熱ストレス制御が有効と考えられる。
|