水牛の特性評価と高度利用に関する比較研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12460118
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 金井 幸雄 筑波大学, 農林学系, 教授 (40015871)
• 研究分担者: 古賀 新 筑波大学, 農林学系, 講師 (10323247) ; 本間 秀彌 筑波大学, 農林学系, 助教授 (60015782)
• キーワード: 熱帯アジア / 水牛 / 水分代謝 / 基礎代謝 / 肉質調査 / 繁殖生理 / アンジオテンシン / 抗利尿ホルモン

研究概要

今後も高い人口増加が見込まれる熱帯アジアにおける畜産発展のために、この地域に適応した水牛を1)水分代謝、2)栄養生理、3)繁殖生理の各側面から牛と詳細に比較検証することにより、総合的に水牛の特性を評価し高度利用の可能性について検討した。
1)水分代謝:中枢におけるアンギオテンシンの解析については、まだ解析中である。本年度は、研究を進めるうちに水牛の水分代謝調節における抗利尿ホルモン(AVP)の反応に熱帯牛と比較して種特異的な違いが見られたことから、体水分保持作用を熱帯牛と比較した。絶水に曝露した結果、水牛のAVP上昇は牛よりも低く、種特異的な環境適応を行っていることが明らかになった。今後は、これらの結果の取りまとめを行い投稿する予定である。
2)栄養生理:東南アジア地域では水牛肉の多くが老齢水牛から生産されることが原因で、水牛の産肉性・肉質は牛よりも劣ると評価されてきた。したがって同一飼料により水牛と牛を6ヶ月間肥育し、日増体量・枝肉歩留まり・食肉特性・官能試験を比較した。この結果、枝肉歩留まりで僅かに水牛が低かった以外は水牛の値に牛と差はなく、水牛の産肉性および肉質は牛の肉と変わらないとが示唆された。今後は、これらの結果の取りまとめを行い投稿する予定である。
3)繁殖生理:水牛では過排卵処置に対する反応が弱く、人為的繁殖技術の適用が難しいことから、牛未受精卵を利用した体細胞クローン胚作出の可能性について検討した。水牛の耳から組織片を採取し、培養によって得られた細胞核を牛の未受精卵に移植して、その発育動態を解析した。その結果、体外培養により受精卵移植可能が可能な胚盤胞までの発生が確認された。したがって、将来的には体細胞クローンの技術を用いることにより、牛同様に水牛の個体増産が可能であることが示唆された。今後は、これらの結果の取りまとめを行い投稿する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Koga A., T.Kuhara, Y.Kanai: "Comparison of body water retention during water deprivation between swamp buffaloes and Friesian cattle"Journal of Agricultural Science. 138. 435-440 (2002)
• [文献書誌] Koga A., Y Kanai.: "Characteristics of thermo-regulation in hot environments in swamp buffaloes"Proceedings of the 10th Congress of the Asian Australasian Association of Animal Production Societies. 1. 264 (2002)
• [文献書誌] Koga A., I.Nonaka, M.Odai, P.Skunmun, Y Kanai: "Comparison of swamp buffaloes with tropical cattle breeds on changes in plasma volume induced by heat exnosure and water deprivation"Proceedings of the 10th Congress of the Asian -Australasian Association of Animal Production Societies. 1. 263 (2000)
• [文献書誌] Koga, A, Y.Kanai.: "Distinctive heat dissipation through blood stream and water turnover in swamp buffaloes"Proceedings of the 4th Asian Buffalo Congress. 1. 255 (2003)