カゼインmRNAポリAの調節機構と乳腺の老化に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12460122
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 酒井 仙吉 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80114487)
• 研究分担者: 青木 不学 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (20175160) ; 今川 和彦 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00291956)
• キーワード: マウス乳腺 / 泌乳の調節機構 / カゼインmRNA / mRNAの半減期 / mRNAのポリA / 転写後調節

研究概要

妊娠末期から泌乳末期までの幾つかの時期のマウスの乳腺から(β、γ)カゼインmRNAを抽出しポリAの長さを決定した。また、同じ時期の乳腺を器官培養し組織内でのカゼインmRNAの半減期を測定した。ポリAの長さはオリゴdTの存在・非存在下でインキュベートした後RNase Hで消化し求めた。また、カゼインmRNAの半減期はアルファアマニチンを加えた培養液で培養しmRNAの合成が起こらない条件下で測定した。
カゼインmRNAのポリAの長さは妊娠中では50程度であったが、妊娠末期から長くなり分娩当日120程度となった。しかし、泌乳の進行とともに短くなり泌乳18日では50程度となった。別の実験から泌乳の進行とともにポリAを延ばす能力自身が低下していることを明らかにした。カゼインmRNAの半減期は、ポリAの長さに正比例した。ポリAの長さは転写(核内)の段階で決定され、細胞質では短くならない。
この事実から、ポリAの長さを変化させることによりmRNAの安定性を調節していることが判明した。この研究の重要性は、転写調節に加えて分解の段階でも調節する機構が存在することを意味し、ポリAの役割について新しい知見を加えることができた。

研究成果

• [文献書誌] Yoneda.M,Shiraishi J,Koraishi T,Aoki F,Imakawa.K,Sakai S: "Gastric Proteinase Digeotion of Cassins in Newborn Pups of the Mouse"Journal of Dairy Science. (印刷中). (2001)
• [文献書誌] Sun.Y,Kuraishi T,Aoki F,Sakai S: "Hormonal Regulation of Mitochondrial Tim23 Gene Expression in the Mouse Mammary Gland"Molecular and Cellular Endocrinology. 172. 177-184 (2001)
• [文献書誌] Koraishi T,Sun Y,Aoki F,Imakawa K.,Sakai S: "The Lactating Mammary Gland changes the Poly (A) Tail Length of Casein mRNA revereibly and rapidly"Biochemical Journal. 347. 579-584 (2000)
• [文献書誌] Yoshioka K,Matada F,Tamura K.Imakawa K,Sakai S: "Determination of Genes involved in the Process of Implantation : Application of Gene chip to Scan 6500 Genes"Biochemical and Biophysical Research Communications. 272. 531-538 (2000)
• [文献書誌] Ito M,Sakai S,Nagata M,Aoki,F: "Effect of Histone Deacetylase Inhibitors of Early Preimplantitia Development in Mouse Embryo"Journal of Manmnalian,Ovarian Research. 17. 90-98 (2000)