さまざまな飼養条件下における肥育牛の血液中レプチン濃度を20頭の雌肥育牛ならびに19頭の去勢牛において検討し、雌牛でも去勢牛でも肥育に伴い血中レプチン濃度は上昇するが、その上昇は体脂肪量に関わらず雌牛で顕著であることを明らかにした。次いで、枝肉形質と屠殺時の血中レプチン濃度の関係を検討し、去勢牛においては脂肪交雑ならびにロース芯面積と血中レプチン濃度との間に有意な正の相関関係が認められ、また、皮下脂肪厚と血中レプチン濃度との関係は正の相関関係の傾向(P=0.09)が認められた。一方、枝肉重量、歩留、バラ厚との間には相関は認められなかった。また、雌牛においては測定した枝肉形質と血中レプチン濃度との間には相関は認められなかった。 雌肥育牛における高い血中レプチン濃度の一因はその高い血中エストロジェン濃度である可能性があったので、ウシ単離脂肪細胞を用いてエストロジェンがレプチン分泌に及ぼす影響を検討し、培地への17β-エストラジオール添加はレプチン分泌を促進することを明らかにした。次いで、栄養操作によるレプチン分泌制御の試みとして、エストロジェン作用に干渉すると考えられているダイズイソフラボンであるゲニステイン添加を行ったところ、ゲニステイン添加も17β-エストラジオール同様レプチン分泌を増加させ、これによりゲニステインはエストロジェン様作用によりレプチン分泌を促進することが示唆された。また単胃動物でレプチン分泌を促進することが知られているインスリン添加はウシ脂肪細胞においてもレプチン分泌を促進した。一方インスリンとゲニステインを共添加すると、レプチン濃度はゲニステイン単独と比較し減少した。これよりインスリンがゲニステインによるレプチン分泌促進作用を抑制することが示唆された。
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