超微量ガラス化法による卵母細胞および受精卵の万能凍結保存システムの開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12460126
• 研究機関: 高知大学
• 研究代表者: 葛西 孫三郎 高知大学, 農学部, 教授 (60152617)
• 研究分担者: 杉本 実紀 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (20243074) ; 枝重 圭祐 高知大学, 農学部, 助教授 (30175228)
• キーワード: 受精卵 / 胚 / 卵母細胞 / 凍結保存 / ガラス化 / 卵巣 / チャンネル / 耐凍剤

研究概要

1.マウス胚盤胞を用いて、凍結融解時に生じる傷害のメカニズムと胚の形態との関係をしらべた。その結果、耐凍剤による毒性の影響を受けた胚は、培養液に回収直後は正常な形態を保持しているものの、培養後まもなく割球が脱コンパクションを示し、そのまま発育停止して死滅する特徴を有していた。一方、細胞内氷晶による傷害を受けた胚は、Sucrose液による希釈時には正常な形態で収縮したが、等張な培養液に回収直後に割球が膨張して死滅する特徴がみられた。これらの知見は、凍結保存条件の最適化に役立つと思われる。
2.マウス卵母細胞に、耐凍剤と水を透過させるチャンネルであるアクアポリン3のcRNAを注入することによって人為的にチャンネルを発現させ、その後の耐凍性と受精・発生能をしらべた。その結果、チャンネルタンパクのcRNAを注入した卵子は、従来細胞膜を透過しにくいグリセロールを用いて凍結しても生存できるようになり、融解後体外受精によって受精できることが確認された。さらに、一部の受精卵は、体外培養によって拡大胚盤胞まで発育した。また、cRNA注入卵子に由来する胚の水透過性は、2細胞期以降は、注入しなかった胚のレベルまで低下しており、アクアポリンの発現は、受精後短時間で低下することも明らかとなった。
3.不妊クリニックにおけるヒト胚盤胞の凍結保存に、クライオループによる超急速ガラス化法を指導して実施した。その結果、従来のストローによるガラス化法に比べて、安定して良好な成績が得られた。
4.種々の発育ステージのラット胚を、従来のストローによるガラス化法で凍結保存した結果、桑実期の胚が最も耐凍性が高く、移植後高率に産子まで発育できることが確認された。

研究成果

• [文献書誌] 葛西 孫三郎: "卵細胞と初期胚の凍結保存"産婦人科の世界. 54・6. 593-601 (2002)
• [文献書誌] 葛西 孫三郎: "生殖医療における凍結技術"Hormone Frontier in Gynecology. 9・2. 183-188 (2002)
• [文献書誌] 杉本 実紀: "卵巣凍結法"Hormone Frontier in Gynecology. 9・2. 135-140 (2002)
• [文献書誌] Kasai, Magosaburo: "Morphological appearance of the cryopreserved mouse blastocyst as a tool to identify the type of cryoinjury"Human Reproduction. 17・7. 1863-1874 (2002)
• [文献書誌] Edashige, Keisuke: "Artificial expression of aquaporin-3 improves the survival of mouse oocytes after cryopreservation"Biology of Reproduction. 68・1. 87-94 (2003)
• [文献書誌] Mukaida, Tetsunori: "Vitrification of human blastocysts using cryoloops : clinical outcome of 223 cycles"Human Reproduction. 18・2. 384-391 (2003)
• [文献書誌] Han, Myung-Sook: "Vitrification of rat embryos at various developmental stages"Theriogenology. 59・8. 1851-1863 (2003)