研究概要 |
本研究の目的は病原性プラスミド上に存在する遺伝子の機能解析を行い、病原性プラスミドが生み出す食菌抵抗性・殺菌回避メカニズムを分子遺伝学的に明らかにしようとするものである。平成12年度には、ロドコッカス・エクイにおける遺伝子発現系の確立:潜在性プラスミドを利用したシャトルベクターの開発を試みた。 シャトルベクターを構築するためR.equiの菌株のうち約6.3kbpの潜在性プラスミドを保有するK56株のプラスミド(pK56)の全塩基配列を決定した。その結果pK56は6,436bpと1,213bpの2つのプラスミドを保有していることが判明した。その後の解析により6,436bpのサイズの塩基配列からローリングサークル型の複製様式をとるPseudomonas fulvaのRepproteinと相同性が高い領域が見つかり、この領域がpK56でもRepとして働き同様の複製様式をとることが予想された。次にpK56のRepliconと薬剤体制マーカーとして、クロラムフェニコール耐性のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子(cat)をpUC19に組み込むことでシャトルベクターの構築を試み、R.equiプラスミド脱落株のエレクトロポーレーションによる形質転換操作を行った。その結果、クロラムフェニコール耐性の形質転換体が得られたものの、シャトルベクターはR.equi内で安定に維持されなかった。形質転換体より抽出されたプラスミドをシークエンスした結果により、シャトルベクターの一部と宿主染色体DNAの一部が置換していることが判明し、そのことからcatのプロモーターが機能していない可能性が考えられた。今回得られたシークエンスデータは今後のシャトルベクター構築のための有益な情報を提供する。
|