本研究は、栽培および野生遺伝資源を有効に利用するために不可欠なコアコレクションを構築することを主目的として行った。ダイズ連鎖地図上にマップされた41の単純反復配列(SSR)標識について、アジア各地から導入された130系統の遺伝子型プロフイルを同定した。UPGMA法およびPCA分析を用いて解析した結果、アジアのダイズ集団が大きく日本と中国に対応した二つの生殖質プールに分割されることを明らかにした。解析したSSR標識から、日本と中国の生殖質プールを特徴づける9個のSSR標識を選び、高緯度地域に適応した長日不感受性ダイズ28系統の遺伝子型プロフィルを同定した。多変量解析の結果、長日不感受性ダイズは、北海道に特異的なI型、日本各地に分布するII型、東北北部のIII型、中国東北地方および極東ロシアのIV型に、大きく分類された。これらの結果から、長日不感受性ダイズの変異をおおよそカバーする12系統からなるコアコレクションを構築した。また、タイ北部で収集されたダイズ系統の遺伝的関係を同じく9個のSSR標識の解析より明らかにした。タイ北部で栽培されるダイズは、過去の奨励品種を主体に、在来種との混合、あるいは在来種と奨励品種の交雑に由来すると考えられる組み換え型から構成されることを明らかにした。一方、コアコレクションの有用性を確認するため、白目ダイズの開花期低温ストレス耐性の評価法を確立し、種々の遺伝資源について耐性の強弱を検定した。北海道で育成された白目品種は開花期の低温により種子の臍周辺に褐色の着色が生じるが、東北や中部地方で栽培されるダイズ品種に低温下でも着色の生じない耐性品種が観察された。現在、白目ダイズのコアコレクションを構築し、多様な材料について低温耐性の解析を進めている。
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