研究概要 |
1.河原・森・安井の3名で,コムギ近縁野生種の変異解明のため,7月7日から8月3日まで,シリア・トルコ・ギリシャで予備的調査を行なった。シリアでは国際乾燥地農業研究センター(ICARDA),トルコではアンカラ大学のそれぞれ担当者と将来の研究協力について打ち合わせをし,あわせて自生地の観察を行なった。ギリシャではエーゲ海東部の島嶼(レスボス,キオス,サモス)で,自生地を調査し種子の収集を行なった。 2.コムギ近縁種Ae.umbellulataについて,河原が種内の形態的変異を観察し,昨年度行なったアイソザイム変異と合わせて遺伝的分化について論文をまとめた。引き続き別の種で,実験を継続しているところである。 3.安井が引き続き,コムギ・エギロプス属のSINE配列の解析を行なった。Ae.umbellulataおよび別の近縁種Ae.muticaから,Auファミリーに属するSINE配列,合計34クローンを単離した。そのDNA配列から,これらのクローンが大きく3つのグループに分けられることを明らかにした。種特異的なもの,種を超えて存在し進化の初期に増幅したと考えられるものなど様々なものがあり,さらに多くのクローンを得て,マーカーとしての適性を評価する予定である。 4.森は栽培コムギの起原を明らかにするため、179系統の4倍性コムギと69系統の普通系コムギを用いて葉緑体DNAのフィンガープリンティングを行った。その結果、野生二粒系コムギの栽培化が肥沃な三日月地帯の北部で行われた可能性が高いこと、また、二粒系コムギから普通系コムギに至る母系が2つ存在することが明らかになった。
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