研究概要 |
本研究では、クリーンで再生産可能・持続可能なバイオマス資源を取り上げ、それらの再資源化、再利用の技術革新のひとつとして、超臨界流体を用いたバイオマスの高速分解による効率的エネルギー化と有用ケミカルスヘの化学変換を検討している。これにより、地球環境と調和した自然の循環系の中で、未利用-廃バイオマス資源を有効に利用するための基礎的研究を推し進め、超臨界流体の持つポテンシャルを明らかにする。まず、各種バイオマスに対し超臨界メタノール処理を行い、350℃一43MPaの条件で、液化完了に要する時間が、アビセル7分、溶解パルプ及びリンター20分、ブナ及びスギ木粉共に30分程度であることを見出した。 さらにセルロース及びリグニンのモデル化合物を用いて、それらの反応機構について詳細な知見を得た。セルロースは超臨界メタノール中での加溶媒分解により、α-,β-メチルグルコシドを与え、これらの一部は熱分解によりレボグルコサン、ヒドロキシメチルフルフラール等の生成物を与えた。一方、リグニンは超臨界メタノール中で速やかに可溶化するが、木材べースで1.5-3%のリグニンが不溶残渣として回収された。2量体リグニンモデル化合物を用いた実験の結果、α-O-4、β-O-4等のエーテル型結合が速やかに解裂する一方、5-5、β-1等の縮合型構造は安定であることからリグニンの可溶化はエーテル結合の速やかな解裂により進行し、縮合型構造に富んだリグニンが残存することが明らかとなった。 一方、木材からのメタノール可溶部を模擬したモデル燃料の定容着火試験の結果、グアヤコールの添加により純粋メタノールよりも着火遅れが改善されるとの結果を得た。今後、超臨界メタノールによる分解機構の知見を基に、液体燃料化及び有用ケミカルス化技術を開発すると共に、液化物の液体燃料及び有用ケミカルスとしての解析、評価を行う。
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