研究概要 |
本研究では、好熱性放線菌のThermoactinomyces vulgarisの生産するTVAIおよびTVAII、ならびに黒麹菌Aspergillus nigerの生産するイソプルラナーゼという特徴的な分枝オリゴ糖生成酵素の遺伝子工学とX線結晶構造解析を行っている。本年度はTVAIとTVAIIにおけるオリゴ糖の基質認識機構を明らかにし、またイソプルラナーゼ変異酵素の発現ベクターの構築した。 【TVAII】触媒残基の一つであるAsp421をAsnに置換したD421N変異型酵素と、TVAによるプルランの部分加水分解産物である六糖のパノシルパノースとの複合体構造が3.3Å分解能で得られた。パノシルパノースはα-(1, 6)-グルコシド結合を含む基質であり、プルランを加水分解することができないタカアミラーゼA等と比較することにより、TVAIIがどのようにα-(1, 6)-グルコシド結合を認識しているのかを検討した。その結果、加水分解を受けるグルコシド結合よりも還元末端側において、基質が取り込まれる際に、興味深い動きを示す芳香族アミノ酸の存在が明らかになった。 【TVAI】触媒残基の一つであるGlu396に変異を導入した変異型酵素E396Aを構築した。また、その変異型酵素を用いて、パノシルパノースとの複合体構造解析を行ったところ、2.0Å分解能で活性部位にパノースの電子密度が確認された。【イソプルナーゼ】触媒残基を特定するために、6つのアスパラギン酸とグルタミン酸に対して部位特異的変異導入を行った変異型酵素(E157Q, E273Q, D353N, D372N, D373N, E356Q)の発現系をメタノール資化性酵母Pichia pastorisにおいて構築した。
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