研究概要 |
我々はすでにイネを材料にして,受容体の研究を行っているが,可溶化の効率や可溶化後のタンパク質の安定性に問題があったために,イネの結果を参考にしながらニンジンの培養細胞を材料にして,ペプチド性植物細胞増殖因子ファイトスルフォカイン(PSK)受容体の精製を行ったミクロゾーム画分を調整し,可溶化剤を検討してトリトンX-100が最適であることが判明した.この可溶化された区分をアフィニティーカラムで精製し,さらにヒドロキシアパタイトカラムで精製後,脱塩濃縮を行い,SDSゲル電気泳動により得られる120kD,150kDのバンドを切り出した.この精製法によりPSKが特異的に結合するタンパク質を高度に精製できたと判断しており,現在部分アミノ酸配列を決定するのに十分な量を確保すべく,大量のサンプルを調整中である. PSKの構造的な特徴は,硫酸基により修飾されたチロシン2残基を分子内に含む点であり,このようなペプチドは高等植物からはPSKが初めての例である.そこでこの硫酸化を触媒する酵素TPSTの精製を行った.アスパラガス培養細胞からミクロゾーム画分を調整し,トリトンX-100により酵素を可溶化した.種々のカラムクロマトグラフィーにより精製を試みたが効率的な方法は,アフィニティークロマトグラフィーだけであった.すなわち前駆体のPSK配列の直前に存在する硫酸化に必須なアスパラギン酸を含む配列を繰り返すペプチドを合成し,これを担体として利用した.このクロマトグラフィーを2回繰り返した後にSDSゲル電気泳動とフォトアフィニティーラベルを組み合わせて,本酵素の分子量を59kDと推定した.
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