ケイジドカルシウム試薬による細胞内カルシウム上昇をPC12細胞に投与することにより、開口放出を誘起して、生起した分泌小胞の開口放出を2光子励起法で観察する方法論を新たに開発した。開口放出は細胞外蛍光トレーサーによってモニターし、2光子励起法の同時多重染色性を利用して、異なるトレーサーの同時多重染色を行った。まず、水溶性で小胞内を染色するSRBと、脂溶性で膜を染色するFM1-43の同時染色を行い、その蛍光比を取ることで分泌小胞の大きさを推定した結果、大型小胞以外に大量の小型小胞の開口放出が起きていることが速く起きていることがわかった。その大きさは直径43nmと推定された。次に、異なる大きさの水溶性蛍光色素の染色性により、融合細孔の大きさを推定したところ、大型小胞のそれはすぐ大きくなるのに対し、小型小胞のそれは1.6nm以上に大きくならず、一秒以内に閉鎖することがわかった。このエンドサイトーシスはGTP-g-Sで阻害されず、dynamin-clathrin依存的なエンドサイトーシスとは異なることが明らかとなった。この過程を立証するために電子顕微鏡観察を行ったところ、FM1-43の蛍光によるDAB陽性の小型の小胞(直径45nm)が多数細胞内に観察され、更にご細胞内に拡散し、エンドソームに融合していることが明らかとなった。こうして、融合細孔閉鎖によって形成される新しいオルガネラの存在が初めて確認された。
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