モルモットとラット心臓から単離した心室筋細胞を用いて、膜電位固定下に筋節長の短縮を測定した。各筋節長を2msec毎に連続記録すると、微小な振動を認め、これを分散値として評価した。分散値は細胞外のCaを除去し、細胞内のCa濃度を低下すると、減少し、逆に5.4mMのCaウワバインによって細胞内のCa濃度を増加すると、分散値は上昇した。更に、リアノジンを与えることによって、、筋小胞体からのCa遊離を選択的に抑制しても、分散値は減少した。これらの所見は、静止心筋細胞で、いわゆるCaスパークがランダムに発生しているとの概念に良く一致している。膜電位を脱分極すると、収縮が惹起されるが、各筋節の短縮を記録すると、筋節によって、短縮の程度にバラツキを認めた。特に、Caチャネルの活性化が低い膜電位で明らかにバラツキを認めることができた。一方、収縮の強度は刺激パルスの頻度に依存して連続的に変化した。即ち、一定時間静止の後、刺激を開始すると、第1発目の短縮強度が最大で、第2発目が極小、それ以降、刺激回数と共に短縮程度は連続的に増加した。通常、これらの階段現象、筋小胞体に蓄積されたCa量に依存しているためと説明される。ところが、テストパルスの電位を、Caチャネル電流が外向きになる電位とし、Ca流入がない実験条件でも、正の階段現象が記録された。この現象は、Na/Ca交換が逆転し、細胞内にCaが流入すること、更に、細胞内のCaバッファーのCa結合能が飽和に向かうことで、説明できるのではないかと考えられる。現在、この作業仮説を証明するための実験を続行している。
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