1)心筋収縮階段現象への細胞内Caバッファーの関与について。 心室筋の収縮は、刺激頻度上昇と共に増強するが、そのメカニズムとして、我々独自の心筋細胞の包括的ダイナミックモデル構築による定量的考察では、心筋細胞内のCa結合タンパクの飽和減少も関与しているのではないかと考えられた。実験系を単純にするため、L型Caチャネル、及び筋小胞体機能を薬理学的に完全にブロックし、膜電位固定による脱分極パルスを与えた際の筋節長の短縮を測定した。膜電位固定によって、Na/Ca交換電流をNi感受性電流として分離できたので、これによるCaの細胞内への移動量を求めた。一方、筋節長から細胞内のCa濃度を求めて、細胞内総Caバッファーの滴定曲線を作図した。結果は、ほぼ全体として一つのバッファーで表すことができ、その濃度は200uM、解離定数612nMであった。刺激が頻回に繰り返されると、Caバッファーは飽和に近づき、陽性階段現象が発生した。この際、Na/Ca交換のCaによる活性化が起こり、正帰還によって階段現象は増強された。 2)心筋収縮についての、Local control theoryについて。 20〜30の連続する筋節長の短縮について直線的イメージセンサーによって測定すると、静止時でも、僅かのゆらぎが観察され、FFT解析で10Hz以下の部位にパワーの増加を認めた。このゆらぎは、Ca過負荷で増強し、Ca除去で抑制された。リアノジンで筋小胞体Ca放出チャネルブロックで、このゆらぎは抑制された。以上、いわゆるCaスパークの重なりによって局所の筋線維が部分的に短縮することが示唆された。また、L-型Caチャネルの活性化閾値の脱分極で、細胞の中で、筋節長短縮の不均一性が認められた。これらの所見はLocal control theoryを指示するものである。
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